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最高裁判所第二小法廷 昭和44年(あ)1931号 決定 1970年2月13日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人林徹の上告趣意第一点のうち判例違反を主張する点について。

所論引用の判例(昭和二三年(れ)第一一六七号同二四年三月一七日第一小法廷判決、刑集三巻三号三一一頁)は、被告人が通常人よりも能力が劣り、過失犯の成立に必要な注意義務を認識し得ず、また認識し得たとしてもその義務を履行する為に適当な手段をとることが不可能であったという主張に関するものであって、本件とは事案を異にして適切でないから、所論はその前提を欠き、適法な上告理由にあたらない。

同第一点のうちその余の論旨について。

所論は、単なる法令違反の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。(業務上過失致死被告事件において、被害者の自転車が被告人の進路前方に停車していた大型貨物自動車の背後から突如飛び出して来たため被告人にはこれを事前に発見することが不可能であったという主張は、単なる過失の否認に帰着し、刑訴法三三五条二項にいう「法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実」の主張にあたらないとした原判断は相当である)。

同第二点ないし第四点について。

所論は、事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張であって、いずれも、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。

よって、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 色川幸太郎 裁判官 村上朝一)

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